毎日が同じ予報となってしまう根本的原因に「アンサンブル予報」があるのではないかと思っています。予報プロセスの実態を知っているわけではないので、あくまでも想像ですが。まずはアンサンブル予報とは? について説明します。
「2」で数値予報の説明を行いました。地球大気全体の状況を「初期値」として、短い時間間隔で数値計算を積み重ねていくのが数値予報です。
アンサンブル予報では、真の値(観測値)とは少しずつずらした初期値(誤差を含む初期値)を複数作り、それぞれを初期値として数値予報計算を行います。初期値に誤差を含まない数値予報を「コントロールラン」、初期値に誤差を含む予報を「アンサンブルメンバー」といい、コントロールランとアンサンブルメンバー全体の平均を「アンサンブル平均」と呼んでいます。アンサンブルメンバーの数は、予報の目的や計算機資源の状況により異なりますが、10~50程度のものが多いのではないかと思います。
何のためにアンサンブル予報をするのかと言うと、数値予報では時間と共に予報誤差が大きくなるわけですが、各アンサンブルメンバーの結果を見て、どのような誤差が発生しやすいのか、バラつきが大きい(予報精度が低い)のか、そうではないのか等の傾向が分かることにより、コントロールラン単独予報をどのように修正したらよいのかの情報が得られるということがあります。
台風の進路予報では、アンサンブルメンバーによって全く違う方向に進む場合があり、その時には予報円を大きくすることにより予報の不確実性を示すことができます。
アンサンブル平均とコントロールラン単独の予報を比べると、「平均的には」アンサンブル平均の方が精度が高いようです。でも思い出してください。数値予報は「誤差の上塗り」です。アンサンブルメンバーは初期値に誤差を加えてスタートさせる予報ですから、基本的に、コントロールランより精度は落ちるのが当然です。なので、アンサンブル平均の方がコントロールランより精度が高いと言ってもその差はごくわずかであろうと思われます。
1週間以上先の天気予報に、精度が良いからと言ってアンサンブル平均を使っているとすると?
複数の予報を平均する(アンサンブル平均)と、気象の基本的性質である「波動」の山と谷が相殺されて、変動の小さい、直線に近い状態(実際には滅多に起こらない)になってしまうと思います。予報期間の長い予報で現れる「毎日同じ」は、アンサンブル平均を使っているために起こっているのではないかと想像しています。コントロールラン単独に比べて、統計的には少し精度が高いのかもしれませんが、とても低レベルの争いなのでは?
心ある予報者ならば、そんな大気状態が予想されたら、「〇〇日以降は誤差が大きいため予報不能」と表明すべきではないでしょうか。
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(2022/9/16掲載)