気温のページ | 気温データから地球大気を見る

気温が高い原因?

気象庁天気相談所では、一般の方からの気象、予報に関する問合せ、相談、苦情に対する対応の他に、報道機関からの取材への対応も行っています。

私が報道機関への対応にまだ慣れない頃、「今日、暑かったですが、その原因は何ですか?」と問われた時には驚きました。「へえー、そんなこと聞いてくるんだ!」と。だってそんなの当たり前、「暖気が流入している中、晴れたから」なのに。

でも、何回か対応しているうちに分かりました。報道機関の皆さんは、その当たり前のことでも裏を取る必要があるということと、何か他の話題になりそうな要因の有無を確認するために聞いてこられるのだということが。

では、高温の原因として、当たり前の「暖気+日照」以外の話題になりそうな要因とは何だか分かりますか?

ずばり、「フェーン」と「太平洋高気圧とチベット高気圧の重なり」です。やはり、記事に「〇〇ではフェーン現象が発生して」とか、「日本付近では太平洋高気圧とチベット高気圧が重なっており」などと書かれていると、暑さに対する説得力が増すような気がします。

さて、「気温のページ」では、「国内気温概況」にて、夏は日最高気温について、冬は日最低気温について、アメダス全地点の平年差のデータに基づいて、なぜ平年より高く(低く)なったかを考察して記述していますが、ここでは、夏に日最高気温が高い場合について、「国内気温概況」にて、何を見てどのように記述しているかについて書いてみます。

まずはベースとなる850hPaの気温に注目します。そもそも暖気が入っているのか、寒気が入っているのか。

その上で日照に注目します。気温を上げる要因の一番は日照です。日照の多寡により日最高気温は大きく変わります。

その次に注目するのは風の吹き方です。日照があっても風が強いと気温はあまり上がらないことが多く、風が弱い方が気温は上がりやすいです。風が山を越えて吹くかどうかも重要で、山の風下では沈降により雲が発生しにくく日照が多くなって気温が上がりやすくなります。また「海からの風」も重要です。夏の日中は陸上より海上の方が気温が低いので、日中に海からの風が吹くと気温の上昇を抑えます。

そしてもう一つの上昇要因が「フェーン」です。夏の日中の気温上昇の要因がフェーン現象かどうかを判定するのは難しいのですが、明らかな時は「フェーン現象により」と記述しています。「フェーン」の場合、風が吹いても気温上昇を抑えることは無く、むしろ上がるという特徴があります。

なお、「太平洋高気圧とチベット高気圧の重なり」については、ある程度長いスパンの現象なので、「国内気温概況」で高温の要因として記載することはありません。

※「フェーン現象」については、下記リンク先でやや詳しく解説しています。

フェーン現象の判定 — 露点温度の利用

(2021/06/25掲載、06/27、8/9追記)