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音楽と気象2 「田園」の第4楽章

「気象を表現した音楽」として真っ先に思い浮かぶのは、ベートーヴェン作曲の交響曲第6番「田園」の第4楽章です。

第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」から途切れることなく第4楽章「雷雨、嵐」に入るのですが、突然不気味な低音弦楽器のトレモロが鳴り、それに続いて弦の薄気味悪い旋律が奏されます。これで、もくもくと立つ積乱雲や空がどんどん暗くなる様子などが思い浮かびます。冷気外出流による冷やっとする風も吹いたかもしれません。

そのうちに大粒の雨がザーッと降りだして、「楽しい集い」どころではなくなります。そして、ゴロゴロという雷の音や耳をつんざく近くの落雷、土砂降りの雨が、強弱を繰り返しながら続きます。積乱雲2~3個が通過した感じでしょうか、やがて雨は弱まり、雷も遠のいていきます。

演奏は途切れることなく第5楽章「嵐の後の喜びと感謝」に移り、雷雲が遠ざかって陽光が戻り、澄みきった青空が再び広がって感謝の気持ちに包まれたような清々しい旋律が奏されます。虹が見えたかもしれません。

これは標題音楽で、標題が曲の内容を表現しているのでそのつもりで聴けるということはあるのですが、おそらく標題が無くても、この曲からは一連の雷雨の状況を思い浮かべることができるのではないでしょうか。それほどまでに素晴らしく、実際の自然の有様が楽譜上に表現されてしまっています。そのせいか、これ以降の曲でこれほどまでに素晴らしく気象の描写をした曲が思い浮かびません。あるのでしょうか?

 

(2020/9/12掲載)