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音楽と気象1 「潮風にちぎれて」

2020/5/22の「オールナイトニッポンゴールド」でユーミンのゲストに「あいみょん」さんが出られて、最後にユーミンベストとして「潮風にちぎれて」をリクエストされました。「私はもとからこの海が好き」と言えるような強がりの女の子にあこがれる、というような感想をおっしゃっていました。

私は、この曲が発売された1977年頃にはよく聴いていて、ユーミン作品の一つとして印象には残っていましたが、メロディーラインばかり聞いていて、歌詞の印象は薄かったのです。「潮風にちぎれる」のは、花びらが風に飛ばされるような、自分以外の第3者であるような漠然としたイメージを持っていましたが、「かわいい彼女のこと、これから自由に愛しなさいよ」、自分が身を引く話で、「ちぎれる」のは自分自身、自分の心ではありませんか。「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱られそうです。

さて、歌詞の中に「吹きすさぶ潮風」が2回出てきます。「吹きすさぶ潮風にあなたは息を止めていた」、「吹きすさぶ潮風にわたしはまぶた閉じていた」。1つめは、別れを告げられた後に2人でいる場面、2つめは、一人海岸で風に吹かれている場面でしょうか。これらがどんな風か、気象の専門家として考察します。

2つとも同じ程度の風をイメージします。
「吹きすさぶ」と言うと、台風による風のような、かなり強い風がまず浮かびますが、別れの場面なので、吹いている風がより強く感じられるということもあるでしょう。この歌は曲調もゆったりであり、この場合、台風のような強い風ではなく、初夏の晴れた日の日中に吹く海風だと思います。「泳ぐにはまだ早い」⇒初夏の海岸、「潮風」⇒海から吹く風、となれば、晴れた日の日中に陸が暖まって吹く海からの風しかありません。
この風は、あまり風速が変化することなく一定の強さで吹きます。「吹きすさぶ」と言うからにはそれなりに強い風、平均8~10m/s、瞬間10~12m/s位の風を思い浮かべます。いかがでしょうか。

(2020/6/4掲載)