気象のキモ4:上昇流、下降流に伴う気温変化

我々は地表面上で生活しています。空気は地表面を突き抜けて動くことができないので、我々は通常、空気の動き(=風)は水平方向のみに起こると感じています。
ところが、上空へ行くと状況は一変します。だって地表面が無いのです。空気が上から下へ、あるいは下から上へと動くことが当たり前に起こります。上昇する空気は気温が下がり、下降する空気は気温が上がります。

このため、上空の気温変化を見る際には、地表面上で生活する我々の常識が通用しないような変化が起こることを踏まえる必要があります。具体的には、地表面上では暖気が流れ込むと気温が上がり、寒気が流れ込むと気温が下がりますが、上空の場合、気温が上がるのは暖気が水平に流れ込む場合の他に、下降流の影響を受けている場合があり、同様に、気温が下がるのは寒気が水平に流れ込む場合の他に、上昇流の影響を受けている場合があります。つまり、「上空では、気温の上昇・下降の原因を、水平方向の暖気・寒気の移流だけで考えない」ことが必要です。

逆に、地表面上では地表面を突き抜けて空気が動かない代わりに、日射による熱の供給と放射による熱の喪失があるので、地表面上での気温変化を考える際には、水平方向の熱の移動の他に、これらの効果を加味して考える必要があります。

このように、地表面上では空気の上昇、下降に伴う気温変化は基本的に起こらないのですが、空気の下降に伴う昇温は無いわけではありません。最も分かりやすいのがフェーン現象です。上空の高温位の空気が山の斜面を流れ下って地表面の気温を上昇させます。

高気圧(背の高い高気圧)の中心付近でも上空からの下降気流があります。地表面近くには気温が低く重たい空気があるので、それを押しのけて地表面まで達することは少ないと思いますが、夜間晴れているのに放射冷却があまり効かない(気温が下がりにくい)場合などは、上空からの下降気流による昇温の影響の可能性があると思います。

(2021/11/16掲載)

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