「毎日同じ」では、天気予報でない2 数値予報の仕組み
なぜ「毎日同じ予報」になってしまうかを考えるにあたり、天気予報の元である数値予報について、ある程度詳しく知っていただくことは避けて通れない道と思われるので、専門家ではありませんが解説を試みようと思います。天気予報の根幹をなしている「数値予報」の根本の仕組みについてです。
地球大気中に、大気全体を網羅するように、3次元の格子点を多数設けます。各格子点に、あるタイミングでの観測結果に基づく気象要素(気温、気圧、水蒸気量、風向、風速など)の値を与えます(初期値)。この値を数値予報の予測式に入れて、ある短い時間後の各格子点の気象要素の値(予想値)を求めます。
数値予報の予測式は、ある短い時間が経過した後の、各気象要素の変化量を示すもの(微分方程式)で、各格子点での気象要素の値や、隣り合う格子点の気象要素の値も用いて計算されます。
気象庁の全球モデルでは、「ある短い時間」は3時間だと思います。このように、まずは3時間後の各格子点の各気象要素の値(予想値)を計算します。次は、その予想値を使って更に3時間後の値を計算します。更にその結果を用いて、次の3時間後の予想値を計算します。これを繰り返して、1週間、2週間先位までを計算します。
さて、この結果が正しければ良いのですが、そうはいきません。予想には必ず誤差(真の値との差)が生じます。
それは困りますね。だって誤差が含まれているのに、その値を使って次の時間の計算をしなくてはなりません。誤差を含んだまま次々と先の時間の計算が行われることになります。でも計算している時点では未来の誤差がどうなるのかは分からないので修正はできません。計算には隣り合う格子の値も使われるので、誤差は時間を経るに従い空間的にも拡大し、最後は真の値とはかけ離れたものになっていきます。
これは数値予報の宿命です。
ここで述べたいのは、「数値予報」では「誤差の上塗り」がなされており、予報時間が長いほど誤差が大きくなっていくという事実です。なので、現状では予報時間1週間先位になるとかなり精度が落ちて、それでも天気予報するに足る程度の精度が確保されていることが多いと思いますが、その先となると精度が大きく落ちると思います。そこで登場するのが「アンサンブル予報」ですが、これについては次回に説明します。
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(2022/8/30掲載)