音楽と気象4 「散りてなお」(映画「みをつくし料理帖」主題歌)

「鬼滅」があふれる中、映画「みをつくし料理帖」を観てきました。映画を見るのは2~3年ぶりです。

10/16のユーミンのオールナイトニッポンゴールドで、監督の角川春樹さん、特別出演の石坂浩二さんがゲスト出演され、「狐が憑いていた」という話を聞き、興味を持ったからです。なんでも、この映画を作ることになったのは京都・伏見稲荷の神様の導きによるというような話でした。伏見稲荷と言えば全国の稲荷神社の総本宮です。その神様は、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)で、食を司っており、そのお使いは狐であり、稲荷神社には狛犬ではなく狐がいます。

映画撮影中に、監督、俳優、スタッフ、みんなに狐が憑いているように感じたというのです。食の神様が導いた食の映画がどんな風に仕上がったのだろうと、興味を持ちました。

料理(=食)を題材にして、幼なじみの二人のきずなが感動的に描かれます。涙を押さえられない所が2箇所ありました。幼なじみの二人が水害によって離れ離れになってしまうという所から始まる話であり、気象もちょっと関係しています。

さて、主題歌の「散りてなお」はユーミンの作詞・作曲です。なんでも角川監督から「春よ来い」を超えるものを、という依頼を受けたそうです。「春よ来い」については別の機会に書くつもりですが、とんでもなく高いハードルだと思いませんか?

ゆったりとしたテンポで、過去の大切な記憶を抱きつつ一歩ずつ進んでいく感じが歌われていきます。「春よ来い」と比べると、1回聴いた後のインパクトの大きさは負けると思うのですが、内容の奥深さでは勝っていて、いつまでも、何回でも聴きたくなってしまうような印象を持ちました。ぱっと見、何を言っているのかよく分からない(解釈が難しい)詞ですが、とても心地よくじわじわしみ込んでくる感じです。文学的であり、芸術性が高いということかなと思います。

気象とはあまり関係のない内容の歌ではありますが、あえて冒頭部分について。
「さらさらと枯れさわぐ」で始まります。「さらさらと」は、「春の小川はさらさら行くよ」を連想して、川の流れのことかなと思ってしまうのですが、川の流れが「枯れさわぐ」のはおかしいので、枯れ草に風が吹いた時に発する音のことかな、と思い直します。続いて「川原ゆく光と影」、川に映る枯草が風に吹かれて動き、また川面で反射された光も共に揺らめいて見えるという情景でしょうか。「今はなき故郷と同じ匂いの風わたる」、やはり、さわがせていたのは風だったんだ・・・

これが正しい解釈かはさておき、気象専門家として、枯れ草が「さらさらとさわぐ」ように聞こえる風速はどれくらいかなと考えると、結構風は弱いけれど、草の音は聞こえる状況ということで、風速3~5m/sくらいかなと思いました。

(2020/10/27掲載)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です