福徳岡ノ場噴火(8/13)の際の噴煙とその影響

IR画像 2021/08/13/15時
IR画像 2021/08/14/15時

8月13日の福徳岡ノ場の噴火には驚きました。

13日朝に噴火が始まりましたが、それをIR画像でしっかり見ることができ、その状態は24時間以上(たぶん30時間くらい)続きました。
図は13日、14日それぞれ15時のIR画像です。図の下端付近に東西にのびる噴煙が見えています。噴煙は東から西にのび、一番長い時は、噴煙の先端がルソン島の西まで達していました。

普段、火山噴火に伴う噴煙は、衛星画像では噴火直後の一瞬だけ見えることが多いのですが、それが24時間以上続いたので驚いたのです。

しかもIR画像で真っ白なので、かなりの高度です。ネット情報では噴煙の高さは16~17km。成層圏に達する高さと思われます。火山関係者からは「久しぶりのプリニー式噴火」であるという興奮の書き込みも多く見られました。海上保安庁の飛行機が現場の状況を調べに行ったのですが、「噴火の規模が大きく近寄れない」との報告をしたことも、「とんでもないことが起こった」感を強めました。

気象(気温)をやっている者として気になるのは、やはりこの火山灰に起因する低温です。成層圏に達した火山灰の滞留により世界的に低温になるというイベントが、過去に何度も繰り返されてきました。最新のものはフィリピンのピナトゥボ火山でしょうか。1991年6月に大噴火、成層圏に注入された大量の火山灰(※)により全球的に低温となり、日本では1993年の記録的冷夏が引き起こされたとされています。

それで、Wikipediaでこのピナツゥボ火山噴火の状況を見てみたのですが、今回の福徳岡ノ場に比べると桁違いにすさまじいものだったようです。噴煙の高さに注目すると、1991年の6月12~14日に噴煙の高さ19~24kmの噴火が4回、6月15日にはなんと、噴煙の高さが40kmに達する噴火があったとのことです。

というわけで、今回の福徳岡ノ場の噴火の気温への影響は、さほど大きくないのかなと思いますが、この9月以降、日本やヨーロッパなどで低温傾向が目立つことや、北極海の海氷面積も、8月、9月にあまり小さくならないまま経過したことから気になっています。ネットでは、今のところこれに関する調査結果等は見当たりませんが、詳しい調査を希望する記事は見つかりました。 https://note.com/tenkiguma/n/nfe38996b4161

※ ここでは、噴火に伴ってできた微小な粒子をひっくるめて「火山灰」と表現しましたが、これは厳密には正しくありません。「火山灰」は地中から噴出したマグマに起因する直径2mm以下の固体粒子のことですが、噴火と共に噴出する火山性ガスによって生成する微小な粒子を「火山性エアロゾル」と呼んでおり、大規模な火山噴火の際は、火山性エアロゾルの一種「硫酸エアロゾル」(液体の粒)が成層圏で生成されて長期間(2~3年程度)留まり、気候にも影響を及ぼすことがあります。硫酸エアロゾル以外の微小粒子は、もっと短い期間のうちに落下してしまいます。

(2021/09/28掲載、9/30追記(※))

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です