音楽と気象12 「ベルベット・イースター」(詞・曲:荒井由実)
初めて聴いたのは高校生の頃、ユーミンが売れ始めた頃で、たぶんNHKFMの番組で、ユーミンのピアノ弾き語りでした。
衝撃を受けました。
まずは、ピアノで弾かれた拍子のよく分からないミステリアスなイントロです。小節線がどこにあるのか分からない感じ。そして特に「空がとっても低い」からの単純でない和音進行。「ドミソ」のような単純な和音はほとんどない。10代後半男子の心を鷲掴みにする魅力がありました。そのような曲を作るユーミンに対するあこがれのような感情も同時に芽生えたのでした。
それで、この歌と気象との関係ですが、「空がとっても低い/天使が降りてきそうなほど」です。
「空がとっても低い」と言っていますが、雲の無い空を「低い」と感じることは無いと思うのでおそらく、雲(あるいは雲底)が低いと感じているのだと思います。
それで、どのような時に「雲が低い」と感じるか考えてみると、
①台風の大雨の直後などに、低いちぎれ雲がものすごい速さで駆け抜けて行くのを見ることがあります。この雲は上空の速い流れに流されているので元々動きは速いのですが、それが通常の雲の動きより速く見えるのは、高度がとても低いからです。
②霧雨のような細かい雨が降る時の雲(層雲)で、雲だけを見ても高さはよく分からないながら「低い」と感じる雲。高層ビルがあれば上の方は隠れて見えなくなる感じ。雲と言っても輪郭が見えるわけではなく、そのために「空が低い」と言っているのかもしれません。
この2つが思い浮かぶのですが、「イースター」というのはキリストの「復活祭」で、日付は「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」とされており、これはだいたい3月下旬~4月下旬にあたりますので、①の可能性はかなり小さいですね。歌詞の初めの方、「小雨の朝」も台風の直後という感じはしません。
というわけで②が本命ですが、あくまでも歌詞の話であり、実際の空の状況とは関係なく、「歌詞としてそういう言葉を入れたいと思っただけ」ということもあり得ると思いますし、そもそも、「雲の無い青空を低いと感じることがある」のかもしれません。作詞者に聞いてみたいところですが難しいと思うので、ご存知の方いらっしゃいましたら教えてください。
(2022/2/24掲載)