音楽と気象5 「九月の雨」(詞:松本隆、曲:筒美京平)
筒美京平さんが亡くなりました。
小学校高学年~高校の頃は(筆者は今62歳)、「ベストテン」など歌謡番組をよく見ていたのですが、「いいな」と思う曲の半数以上が筒美京平作曲だったような気がします。その後は歌謡曲を聴く機会が減ったのですが、筒美さんの活動は続いていて、しかも少年隊への提供曲など、以前とは全く違った曲も作られていて、本当にすごい作曲家だなと思っていました。
「九月の雨」は、大学に入った年に発売された太田裕美さんのシングルで、筒美作品の中でも好きな曲の一つです。メロディラインが美しく、低音、小さな声で始まって、「セプテンバーレイン、レイン」にかけて盛り上がっていく感じが素敵です。
さて、気象専門家としては、「九月の雨」というと「大雨災害」を連想してしまいます。9月は海水温が一年中で最も高い時期に当たり、大気中で雨の素になる水蒸気の量が多くなりやすいことや、台風、秋雨前線など、大雨の舞台が整いやすいことがあり、過去、多数の大雨災害が発生しています。
ただ、この歌の中の雨は、災害を起こすような降り方の雨ではないようです。
実は、このブログを書こうと思って初めて詞をしっかり見たのですが、「九月の雨はつめたくて」「九月の雨の静けさが」「九月の雨はやさしくて」と、冷たく静かに降る雨が恋愛のつらさに絡められており、叩きつけるような激しい雨は思い浮かびません。この雨は、東京で考えれば、前線が南海上に停滞して北東から寒気が流れ込み、冷たくしとしと降る雨でしょう。
(2020/11/8掲載)